この幹事会では森下弘幹事長,青木佳史副会長,副幹事長6名に加え,幹事や一般会員が参加して,日本弁護士連合会から提案を受けた依頼者保護制度について意見を交換した。
冒頭で青木副会長から,上記制度に関して説明があった。
① 預り金について
具体的な預金口座を弁護士会に届け出る。弁護士会による調査の端緒の例示を図る。
② 依頼者保護給付金について
会員が預り金等を横領した場合,被害者に対して,弁護士会に監督責任がないときであっても,一定の範囲で見舞金を給付する。
その後,出席者が意見を交換した。発言の要旨は次のとおりである。
【依頼者保護給付金】
・ 申立ての受理や審査など,弁護士会の作業量が増えると見込まれるものの,それに伴う経費は試算されていない。
・ 重要な議論であるにもかかわらず,意見照会の期間が短かったり,日弁連による議論が先に報道されてしまうなど,議論の進め方に大きな問題がある。すでに報道されたのに,単位会の反対でやめるのですか,という印象を与えかねない。
・ この制度の趣旨は被害者の保護にあるとのことだが,それは弁護士法所定の弁護士会の目的に合わないのではないか。強制加入団体である弁護士会が,目的外の活動をするのはおかしい。
・ 見舞金の規模が試算されているが,その規模で収まるとは限らない。試算の規模で収まらなかったとして,支給の金額を変更するのか,それとも見舞金を廃止するのか。強制加入団体がいったん決めたものを,執行部の裁量で減額したり廃止したりできるのか。
・ 見舞金の給付の対象は「有罪判決」を受けた場合とするようだが,それに限られるのか。余罪があったとき,見舞金を給付する対象となるのか。
・ 強制加入団体において,反対する会員の多い案件を強制的に実行できるのか。
・ 一般市民の視点から,見舞金の給付が市民の信頼回復に資するといえるのか。むしろ,弁護士会が個々の弁護士を監督する立場にあり,その監督を怠ったから金員を給付するとの誤解を招くのではないか。弁護士会は例えば,勤務弁護士や事務局による通報の窓口を設けるなど,不正の防止に尽力すべきである。
・ 司法書士が類似の制度を設けていると言われているが,その実態は全く異なる。司法書士は会とは別の法人を立ち上げ,対象は成年後見に特化しているし,個々の司法書士への監督も徹底している。こちらのシステムの方が合理的と考える。
これに対し,見舞金の制度は弁護士会そのものが運営しているし,予算の規模は司法書士と比べて大きい。強制加入団体がこのようなシステムを運営できるのか。
・ この制度では見舞金の上限が設けられており,例えば被害金額が500万円の事件も,5億円の事件であっても,見舞金は500万円と想定されており,不公平である。だからといって,一律に被害金の数パーセントとすると,それこそ見舞金にしかならない。
いずれにせよ,弁護士会に対するクレームは和らぐかもしれないが,弁護士に対する信頼が回復できるのか。
・ 見舞金を給付する法律構成が不明確であり,事件を起こした個々の弁護士に対して求償できるのかが疑問である。
・ 弁護士自治に鑑みれば,弁護士と司法書士には違いがある。司法書士が類似の制度を設けているから弁護士もする,という発想はおかしいのではないか。
・ 弁護士自治のもとでは,弁護士を監督するのは弁護士会である。公務員が不正をし,国が監督を怠れば国家賠償が認められるように,弁護士が事件を起こし,弁護士会の監督に不行届きがあれば,弁護士会が被害の回復を図らざるを得ない。
だが,今回の案は検討が不十分だと思う。それよりも,不正を予防する措置の実効性を高めることが先決である。
・ この制度を設けたとしても,被害者には不満が残る。過去に同期の弁護士が事件を起こした際,弁護士会の調査が甘かったと言われた。見舞金を給付するよりも,不正の予防,弁護士会による監督の実効性を高めることにエネルギーを費やすべきだ。
・ 会費が事件の予防に使われるのであれば,反対しない。
・ 既存の懲戒制度は時間が掛かり過ぎる。これを改革して,活性化を図るべきだ。
・ 弁護士会が懲戒を立件できる事案は限られているのが現状だ。横領を予防し,又は早期に発見するには,弁護士の業務用の預金通帳の提出を求めるのが効果的である。預金通帳の提出を求める制度を設けるべきではないか。
・ 弁護士会の監督責任を重視するのであれば,給付の名目は「見舞金」ではなく「損害賠償」であり,要件もより制限される筈である。この制度は何を目的としているのかがよく理解できない。
・ 弁護士会はもちろん,弁護士も賠償保険に加入する例が多いが,弁護士の故意による事件は保険ではカバーできない。そのような事件にどのように対処すればよいのか。
・ 一般市民にとっては,見舞金と損害賠償金の区別は難しい。見舞金との名目であっても,弁護士会が金員を支払えば,市民は会が監督不行届きを認めたと受け取るのではないか。
・ 見舞金のように,事後に被害の回復を図る制度を設けるとすれば,弁護士への責任追及や破産申立て等を検討すべき。単にお金を渡すだけ,では足りない。
・ 不祥事は事件の放置につながる。従来は同期の弁護士がボランティアに近い形で対応してきたが,今後はそのような対応も難しくなるだろう。弁護士会は不祥事の対応に尽力すべきだ。
・ 大阪弁護士会では成年後見の監督を充実させており,不祥事が起きにくい。成年後見の監督に力を注いでいるのに,今回の制度が成年後見に注目するのはおかしい。
・ 大阪弁護士会で独自の制度を設けることはできないか。
・ 日弁連が基金を設け,希望者だけがこれに参加するという制度はどうか。基金への参加を依頼者の信頼に結び付けることができると思う。
【預り金】
・ 弁護士会の作業量は大きい。大阪弁護士会を見れば,会員が4300名を超えており,1名の弁護士が複数の預り金口座を持っていることも多い。
以上


