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政策委員会ー春秋会第3回政策シンポ 人権擁護・法の支配と弁護士業務の基本的条件とは
- 政策委員会主催の第3回ミニシンポ「21世紀・弁護士・弁護士会に未来はあるか」が1月31日開催された。参加者は少なかったが、「劇団春秋」の旗揚げの寸劇が披露されたり、パネラーを交えた本音の議論がなされる等、本年度を締めくくるうえで大変有意義なシンポだった。
- 今回のシンポの目玉は劇団春秋の寸劇「20××年、ある若手弁護士の風景」。第1話「ロースクールで借金まみれ」は、3回の司法試験受験に失敗し、奨学金などで多額の借金を抱えた元ロースクール生が、再びロースクールに入り直すために春山弁護士事務所に任意整理の相談に来たときに偶然に同事務所で勤務するロースクールの元同級生と出会うというストーリーであり、第2話「宅配ピザ弁護士」は、宅配ピザ屋でアルバイトをしていた若手弁護士が自分の職業が弁護士であるを明かしたところ、実は店長も弁護士であったことがわかったというのがオチの話である。ここまでは実に暗いが、第3話「希望」の冒頭で、第1話・第2話が、実は春山弁護士が見た「夢」であることが明らかにされる。そして取り調べの全面可視化や国選報酬の大幅アップが実現されたというニュースが飛び込み、春山弁護士の事務所に、その献身的な弁護活動に感動した依頼者と勤務先の社長が訪問し、弁護士保険や弁護士基金の創設に向けて活動を始めたという話をして互いに手を取り合って終わるというものである。
- この後3人のパネリストが、この寸劇の感想と今後の弁護士会に未来はあるかというテーマで語り合った。宮崎裕二会員は、主として業務改革の観点から経済的基盤が確立しなければ礼節を知ることはできないとの意見があり、これからは事務所で待っているのではなくて弁護士側から商工会議所、自治会、学校など社会の中に出ていくことが必要であること、弁護士情報提供制度の充実や遺言相談センターの設立、弁護士保険の拡充など具体的な方策が示された。小橋るり会員からは、ロースクールの授業料の高額化は「格差社会の再生産」となる危惧はあるが、多くの実務家教員が献身的な教育を実施していることは評価すべきこと、刑事手続きについては公判前整理手続や裁判員制度が拙速な運用となって被告人の弁護権を侵害することのないようにする必要があること、市民と弁護士のアクセスの問題として弁護士は事務所で待っているだけでは駄目という意識改革が必要であるという意見が出された。増田尚会員からは、3000人増員により、弁護士の経済基盤が切り崩される結果、「個人商店はシャッター通り? イソ弁・ノキ弁はワーキングプア? 競争原理でプロボノ切り捨て」という状態となること、過疎地対策は増員・競争という経済政策では成果を得られないこと、高額ロースクールと修習給費の廃止は「多様な人材」から低所得層を排除すること、3000人見直しと、競争によるビジネスモデルではなくプロフェッションモデルの復権によってこそ明るい将来が展望できると強調された。
- 会場参加者を交えたフリートーキングでは、3000人見直しの鳩山発言については必ず財界や一部マスコミの巻き返しが予想されるので警戒しなければならないこと、増員と過疎地対策は直接結びつかないこと、3000人にブレーキをかけることは既に一致しているが具体的にどうするのかこそが問題であるということが共通して指摘された。また、司法改革の理念は正しかったが、法曹人口を増加させることで法の支配が徹底できるという考えが甘かったのではないかという意見や、司法試験に通れば必ず食えなければならないという前提自体がもはやおかしいのではないか、試験に通っても弁護士になれない人が出ても当然ではないかという刺激的な意見も出された。最後にパネリストから、弁護士・弁護士会のこれまでの活動や果たしてきた役割からも「弁護士、弁護士会には、未来はあるし、また未来をつくらなければならない」という力強い言葉で締めくくった。
- 私も修習生の指導担当やロースクールの非常勤講師として日常、修習生やロースクール生に接しており、今回の寸劇をみて、彼らに本当に希望と魅力ある法曹界を語ることができるのという深刻な気持ちになった。寸劇は第1、第2話が「夢」で、第3話が「現実」という設定であるが、これが逆にならないようにすることが緊急の課題であろう。個人的には、司法改革の目指した理念や方向性そのものは決して間違っていなかったが、法曹人口増のスピードに法的需要や業務基盤の整備・拡大、他の制度改革が追い付いておらず、その弊害の部分が大きく出てきてしまっているのが今日の現状であると思っている。そうだとすると、3000人増員の見直しとその実現のための戦略・具体的な戦術の確立、そして増員時代における弁護士の財政基盤の確立のための早急な具体策の実施が、今の弁護士会と弁護士にとって最も重要なことではあろう。しかし、それと同時に、弁護士会や弁護士が単なる職能集団というだけでなく法の支配と人権擁護の担い手としてのアイデンティティと団結を保ち続け、そうした存在として社会の中で必要性を認知され続けるための弛まぬ努力の方もまた必要であろうと思う。
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