1、はじめに
去る7月29日、乘井弥生先生を講師として、「離婚事件のトータルサポート~DV事件を中心として~」というタイトルの研修会が行われました。
参加者は35名と、用意されていた机が足りないほどの盛況で、しかも、男性の参加者が意外と多く、DV問題に対する弁護士の先生方の関心の高さが伺われました。
乘井先生は、軽快な口調で、DVの基本的な構造に関する話から、弁護士が相談を受けた際の注意点、事件解決のためのメニューなど、私のようにまだDV事件を経験したこともない新人弁護士にもよく分かるようにご説明くださいました。
2、DVの構造
研修会の内容を軽くご紹介しますと(あくまで私が理解できた範囲内ですが)、「DV」とは、単に身体的な暴力のみを意味するのではなく、社会的な男女の固定的な役割分担、経済力の格差等に基づくあらゆる暴力のことであり、具体的には、生活費を渡さないとか、実家や友人との付き合いを制限することなども含む概念であるということでした。
そして、DVは、単なる個人間の問題ではなく、男女の役割に関する社会通念等の外部社会からの圧力によって支えられているところがあり、加害者は加害意識が薄く、被害者は長年の間、現状に耐え続けてきたという構造があるとのことです。
また、加害者は、学歴や収入等とは無関係であり、むしろ力関係や権威に敏感であり、強者の指示命令には従順という一面もあるということでした。
3、相談と事件解決のプラン
このような、DV被害者の相談を受ける際には、上記のようなDVの構造を念頭に置き、二次被害を防止し、相談者の自己決定を尊重するために、安易に「逃げればいいのに、なぜ今まで逃げなかったの?」などと言うことには気をつけなければなりません。そして、相談者が夫との共同生活解消の決意ができているかどうかをしっかり見極め、できているようであれば、相談者の安全確保と自立支援のための方策をアドバイスする必要があります。
具体的には、どこへ避難するか(たとえば、相談者が実家に避難したいと思っていても、実家の両親等がDV夫に適切な対応ができるかどうかを判断する必要がある)、何を持ち出すべきか(現金、通帳、身の回りの必需品、おもちゃなど子どもが大切にしている物等)、住民票(原則として動かさない)、健康保険の異動(厚生労働省通達H16.12.2「婦人相談所が発行する『被害を受けてる旨の証明書』を持って保険者へ申し出る方法」)、子どもの学校の関係(住民票に関係なく居所の学校に入れる)などです。
そして、保護命令の検討、離婚調停、離婚裁判、刑事的対処を検討していくことになるということです。
4、さいごに
このように、研修会では、DV被害者の相談を受けたときから、最終的な結論に至るまで弁護士がDV問題で関わっていく際の流れについて、具体的でわかりやすい説明がされました。
その後の質問の時間も、各先生方が実際に扱っておられる事件での疑問点等、活発な議論が交わされました(中には、DV被害者が男性というケースもありました。)。
研修は居眠りをして、資料をもらってくれば良いと信じて疑わなかった私にとっても、「これで俺はDVの専門家になったんちゃうか。」と思えるほど充実した研修会でした(乘井先生には「この程度しか理解してないのか」とお叱りを受けるかもしれませんが・・・)。
以上


