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日弁連理事会だより (12月15日・16日開催)
・開示証拠の複製等の交付について会則化の議論が進む・スタッフ弁護士の養成事務所に助成金の交付が決定・ゲートキーパー問題が急転、制度の導入に全面反対に
1.開示証拠の複製等の交付に関する規定案が継続審議に
刑事訴訟法の一部改正が11月1日から施行され、検察官からの証拠開示が大幅に拡大されたことに伴い、関係者のプライバシーの侵害や証人威迫等の弊害を除去するために開示証拠の複製等の適正管理が義務付けられ、その保管をみだりに他人にゆだねることが禁止されました(刑事訴訟法第281条の3)。法で禁止されている証拠物等の「複製」とは、証拠の全部または一部をそのまま記録したもの及び書面を指していますので、記録の一部を引用したり要旨を抜き出すことは「複製」に該当しませんが、「審理の準備目的」のために第三者に交付する場合のルールを定めないと弁護活動が萎縮するおそれがあります。今回理事会で討議されている規則案は、正当な弁護活動を保証し、被告人の防御権を確保するため規則化しようとするものです。この規定は、「審理準備目的」のための開示証拠の第三者への交付について弁護士の職務の規律を定めるもので、「審理準備目的」外の正当な使用(例えば、修習生の研修目的での交付や学術目的での複製等)がどの範囲で認められるかは刑事訴訟法第281条の4第2項の解釈となります。この規定案が総会で承認された場合は、規定に違反して被告人や第三者に交付等をすると懲戒の対象となることから、ガイドラインの作成にとどめるべきとの意見も理事会ではありました。しかし、法が「みだり」に第三者への交付を禁じている以上「みだり」にの解釈について一律的に規定を定め弁護活動が萎縮しないように弁護権の確保のためには必要との意見が大勢を占めており、引き続き継続審議されることになっています。
なお、裁判所の処置請求に対する取扱規程の制定については一部修正の上承認され来年3月開催の臨時総会で議案として諮られることに決定しています。
2.日本司法支援センター常勤弁護士養成援助基金特別会計設置要綱が成立
日本司法支援センター(法テラス)では、3年間で300人のスタッフ弁護士を確保するべく司法修習生を中心として採用活動を展開していますが、大阪的に言えばスタッフ弁護士を無償で養成し法テラスに送り出すのでは、養成事務所の経済的負担が大きく手を挙げる事務所が限られてきます。現に今でもやっと全国で100カ所を超えたところです。せめてその経済的負担を一部でも軽減するべきで、その旨の発言をしていたのですが、このたび正式に特別会計の設置要綱が提案され、1年間司法修習生の養成を受け入れる法律事務所に100万円の援助をすることになりました。この制度は、研修開始後4ヶ月経過時に養成事務所に支給されるが、但し将来司法修習生が、研修終了後養成事務所で就職するか養成事務所の紹介で他の法律事務所に就職したなど、養成受入弁護士が関与して司法支援センターに就職しなかった場合は援助金の返還をしなければなりませんが、100万円の対価はスタッフ弁護士の研修、養成にあることから仮に司法修習生の心変わりで他の事務所に就職したりひまわり公設事務所に赴任した場合などには返還の必要がありません。
また、「法テラス」の地方事務所には事務局長の人選が急がれています。12月中に弁護士会で人選の目処がつかない場合は法務省や裁判所から人材が出向などで供給されうることになりかねないとの説明があり、各地からは必死に事務局長の適材確保に奔走しているのに、こんな提案ではまるで天下りを容認せざるを得ないような提案で対策本部としてしっかり法務省と交渉するべきとの意見が相次ぎましたが、その通りで地方事務所の事務局長に安易に官からの出向者を受け入れるべきでなく、時間をかけてでも各地で事務局長の適材を弁護士会の手で確保するべきと思います。
3.FIUが警察庁に移管されゲートキーパー問題が重大局面に
ゲートキーパー(FATFの勧告に基づき疑わしい取引等について弁護士が行政庁の門番として通報義務が課せられる制度)については、これまで弁護士制度の根幹に関わるものだけに最も侵害の少ない制度として、弁護士の通報先を日弁連とし、日弁連から金融庁のFIU(金融情報機関)に通報することとし、日弁連は行政庁からいかなる指揮、監督も受けないことを骨子とした制度設計を法務省と協議し、概ねその方向で決着が見込まれていました。ところが、11月17日の内閣府のテロ対策推進本部でFIUが金融庁から警察庁に移管されることに決定したことから、日弁連としては刑事捜査等で対立関係にある警察庁への報告義務を課せられる制度は弁護士の存立基盤である国家機関からの独立性を危うくし、国民の信頼を損ねるとのことで制度化に全面的に反対することで強力に運動を展開することで方針が承認されました。具体的には、既に11月18日付で会長声明が出されたが、マスコミ等の報道機関や国会議員などへの働きかけ、リーフレット作成等による市民への理解と賛同、市民集会の開催などが提案され承認されましたが、国民にとってはテロ資金対策のための情報をなぜ弁護士が拒否するのか理解を得にくい面もあり国民的運動となりにくい側面があります。しかし、依頼者が弁護士に安心して真実を話さなくなれば弁護士は適切な助言や支援ができなくなりますし、そのことで依頼者が結果的に違法行為をおかすというリスクが生まれることも事実です。弁護士の秘匿権は、法の支配を広げつつ民主主義の根幹に関わることを国民に理解して貰わなければならないと思います。同時にテロ対策資金やマネーロンダリングの未然防止のために研修の実施など何よりも弁護士自体がこの問題の重大性と問題性を理解する必要もありますが、なんと言っても「ゲートキーパー問題」という横文字が関心を薄くしているのかも知れません。


