春秋会会員研修 映画「うまれる」のご報告

1 はじめに

 春秋会研修委員会では、平成24年7月28日、大阪弁護士会館2階ホールで、映画『うまれる』の上演会を行いました。
『うまれる』は、「子供は親を選んで生まれてくる」という胎内記憶をモチーフに、命を見つめる4組の夫婦の物語を通して、自分たちが生まれてきた意味や家族の絆、命の大切さ、人との繋がりを考える、豪田トモ氏が平成20年より製作を開始し、企画・監督・撮影をされたドキュメンタリー映画です。
本上映会は、会員のみならず、広く市民に映画を観ていただくべく、研修委員会で独自のホームページを作成し、呼びかけをしました。

2 多数の会員、市民の方にご参加いただきました

 上映会当日は、午前の部、午後の部の2回の上演を行いました。
午前の部では、「赤ちゃんの泣き声は映画のBGM!」というコンセプトで赤ちゃんと一緒に映画を観れる「ママさんタイム」上映とし、託児もできるようにした結果、多くの幼児連れのご家族にも来ていただくことができました。
結局、午前の部では約120名、午後の部では約90名のご参加をいただきました。
従前の研修とは異なり、会員個人の参加というよりも、会員のご家族、市民の方、特に小さなお子さんを連れたご夫婦、妊娠されている方が多く来場されたように思います。
また、講演会のために来て下さった監督によると、大阪での講演は初めてだそうですが、これまで通常8割の観客が女性であるところ、今回の上演会では男性の比率が多く(ざっと見た限り3~4割程度だったでしょうか。)、驚いたとのことでした。

3 「うまれる」ことを考え、命の尊さを再確認しました

 『うまれる』では、両親の不仲や虐待の経験から親になることに戸惑う夫婦、出産予定日に我が子を失った夫婦、子どもを望んだものの授からない人生を受け入れた夫婦、完治しない障害(18トリソミー)を持つ子を育てる夫婦の4組のご夫婦が登場します。
どのご夫婦のお話も、非常に感慨深いものでした。ここに、少しだけご紹介させていただきます。
『うまれる』は、コンセプトとなる胎内記憶、すなわち3歳程度の子どもの3割程度が、親を癒すため、助けるため、もしくは自分の修行・成長のために、どのカップルの子どもになろうかと探したことや、母親の胎内にいたときの記憶をもっているようである、というところから始まります。
1組目の伴さんご夫婦は、虐待を受けた経験等から、初めのうち、「親子関係は連鎖する」という事から、子どもを育てることについて不安がおありでした。
しかし、夫婦で子どもを受け入れる準備をし、実際にお腹の中で子どもが成長する中で、子どもに対する強い愛情、親としての自覚をもたれていく様子が伝わり、親子関係がつくり出されていく過程を疑似体験でき、感銘を受けました。
豪田監督の話によると、伴さんご夫婦からは虐待の連鎖を止める方法を学べるということ、また、現在、お二人は長女に加えて次女にも恵まれ、幸せな生活を送られているそうです。
2組目の出産予定日にお腹の中で赤ちゃんを亡くした関根さんご夫婦は、深い悲しみの後、出産だけが「うまれる」ことではなく、赤ちゃんはお腹の中に宿ったときに「うまれ」たのであると感じ、その成長の過程を大切に過ごせたことを語られました。その様子に、子どもに対する深い愛情を感じると共に、「うまれる」ことの様々な意味を考えさせられました。関根さんご夫婦には、現在、亡くした長女椿ちゃんの妹になる菖(あやめ)ちゃんがやってきて、椿ちゃんを含め、家族4人で過ごしておられます。
3組目の重度の障害をもち、長く生きることが難しいかもしれないと言われた長男虎くんを育てる松本さんご夫婦は、長男が自分たちの子どもという前に、1人の人間であり、その人生を全うするために生きているのだと気付いたと語られました。その言葉に、子どもは親とは別個の存在であり、その個人としての人生を生きているという当たり前ですが、ともすれば忘れそうな大切なことを思い出させられました。ちなみに、1歳の誕生日を迎えられるかどうか心配されていた虎くんは、現在3歳の誕生日を迎え、にっこり笑うことも増えているそうです。 4組目の長年の不妊治療の末、子どものいない生活を受け入れた東さんご夫婦の奥様は、多くの不妊治療の患者さんを抱える産婦人科病院の管理部長として赤ちゃんを待つ方々のサポートをされています。ご自身が子どもを授かりたかったという気持ちをもっておられることで、苦しむ患者さんの気持ちに寄り添った活動をされていますが、一方で様々な事情によって中絶せざるを得ない命にも出会われます。私は、東さんが赤ちゃんは親を決めて降りてくるというけれど、本当に親を決めて降りてきているのだろうか、とつぶやくように言われた言葉が胸に刺さりました。

4 監督からのおねがい

本映画は、映画が始まると目を離すことなどできません。
それぞれの命に向き合うことで、泣いたり、笑ったり、それはもう、ずっしりとした観心地です。
しかし、観終わった後は、生きていることの素晴らしさ、命の尊さをしみじみと感じ、温かい気持ちになります。
長年、不仲だったご両親との関係を改善したいという思いから映画を製作し始めた豪田トモ監督は、映画作りを通して両親と若いし、現在では1歳のお子様の父親にもなったそうです。講演会では、『うまれる』を考えることは、自分自身の親子関係を考える契機でもあるとして、「うんでくれてありがとう。」という言葉を親に言うことは、相手の全人格を肯定する言葉であり、かつ、それを伝えることはオリンピックで金メダルをとるようなことだとお話しになりました。
確かに、この言葉は、言えそうでなかなか言うことができない言葉である一方、とても素晴らしい言葉です。
すぐに実践できるかどうか自信がありませんが、まずは銅メダルをとれる位の親孝行から始めようと思いました。

5 さいごに

 今回の研修は、従前の研修の枠を越え、市民参加型の企画でした。
豪田トモ監督の講演後の質問コーナーでは、生きることについて考えた、学生や男性を含め、もっとみんなに『うまれる』を観てもらいたい、といった市民の方からの声が相次ぎました。
『うまれる』は、現状、DVD等はなく、「地域を超える!人がつながる!」というコンセプトで地域活性化を目的とした自主上映会での鑑賞のみとなっています。平成22年10月に封切りとなった後、現在までに15万人を超える方が鑑賞されました。
今後、大阪でも上映会が予定されておりますし、新たに上映会を企画することも可能です。研修で見逃したという方、上映会を企画したいという方は、『うまれる』のHPをご参照下さい
( http://www.umareru.jp/everycinema-schedule.html )。
最後になりますが、本研修では、沢山の会員の方に来ていただきました。
丹羽雅雄幹事長の「命の原点」を感じたというご感想には観客が一斉に頷いておられましたし、石田法子先生の監督への的確なご質問は監督の講演会をより一層盛り上げて下さいました。研修委員を代表して、御礼申し上げます。
研修委員会では、今後もユニークで役に立つ企画を考えておりますので、皆さまどうぞ宜しくお願い致します。
なお、本研修は、高木吉朗委員長はじめ、林邦彦研修委員会担当副幹事長の熱意と、福崎浩先生、松尾洋輔先生のIT技術、片岡牧先生の実務能力、そして各研修委員の協力なくして実現しなかったことを付け加えさせていただいて、報告と致します。

以上