研修報告 (生活保護の実務)

5月16日、平成25年度春秋会研修委員会第1弾の企画は「生活保護の実務」と題して開催しました。”生活保護”という言葉をマスメディアで見ない日、聞かない日はないぐらい、”生活保護”に対する関心が高まり、法律問題を処理するうえで思いもせず、”生活保護”という制度が出てくる機会が以前より増えているように感じます。

研修会では、出版予定のQ&A執筆者より、生活保護の基礎に加え、民事事件や家事件と生活保護、刑事事件と生活保護といった事件に応じた横断的な視点で生活保護を捉える狙いがありました。時間と準備不足から、本当にエッセンスだけを伝える程度の内容にしかなりませんでしたが、是非とも今秋(?)に出版されるQ&Aを手にとって頂きたいと思います。

とくに康由美弁護士からは、Q&Aには掲載予定のない、多くの刑事弁護人が悩んでいるであろう、情状と生活保護、執行猶予後の支援としての生活保護等といった議論があり、制度の間の問題が浮き彫りとされ、国選弁護人による法テラス自主事業の活用の是非、といった問題と併せて、問題提起を頂いたように思います。

この間、生活保護の基準を引き下げた予算が成立し、本年8月から保護費の減額が実施されようとしていますし、また、申請を要式行為化しようとする法の変更案まで出てきている状況です(この結果によっては出版原稿が大幅修正を余儀なくされる可能性も・・・)。いずれも原因の解決を目指すものではないので、当面、過酷な貧困問題が生起することが考えられます。

貧困は見えにくいのです。この原稿を書いている折、弁護士会館から目と鼻の先にあるマンション一室で、DV被害から避難されていた母子が遺体となって発見されました。報道によると餓死の疑いがあるそうです。この母子を生活保護に繋げることができなかったのはなぜか?を考えています。
生きたいと強く願っての避難です。避難先居宅をなんとか確保できる知人らの支援もお持ちでした。きっと保健福祉センターなどの行政機関、弁護士会館などに情報を求めて彷徨っておられたのではないでしょうか。これ以上借金できない状態だったのかもしれません。弁護士会が出会い得た方だったように思えてなりません。そんなとき、弁護士も生活保護のことを知り、困窮している方の不安を取り除いてアドバイスできるように準備しておきたいと思います。
 たとえば、住民票の異動は生活保護を利用する上で必ずしも必要ありません。DV事案であることをきちんと伝えることにより、福祉事務所から扶養照会がなされることにより、加害配偶者に居場所を知られる事態も防止できます。すでに帰来可能性のない避難であったことからすると、加害配偶者との世帯を同一とみることが適当ではないケースとして、決して十分ではないにしても命を繋ぐための生活を確保できたはずです。時々かもしれませんが、子どもにおいしいものも食べさせてあげることもできたはずです。
生活保護に対するネガティブな情報が伝わっていたのでしょうか?少なくとも私たちにこの母子が見えていませんでした。
間接的ではありますが、母子が抱えた貧困をきちんと発見することができる下地作りとして、今後もこうした研修を続けていきたいと思います。