
平成22年7月14日午後6時から2時間余り,大阪弁護士会館で,春秋会研修委員会と春秋会若手会共催の新入会員特別企画研修が行われました。
この研修は、今年度の春秋会研修委員会が主催する研修企画としては、同年6月8日に行われた「動産執行・債権執行」に続く第2回目であり、今回は、前回と同じく、対象者の62期を含めて計約30名の大盛況となりました。
新人の視点から
今回のテーマは,「破産申立ての実務」。
講師は、元春秋会会員・現京都弁護士会所属の松藤隆則先生(54期)、現春秋会会員の清水伸賢先生(55期)、元春秋会会員・現奈良弁護士会所属の松本浩志先生(56期)でした。
いずれの先生も、倒産実務経験が豊富な先生方でしたが、私たち新入会員と期が比較的近いこともあって、講師の先生方が新人の時にどういった点で悩み、つまずき、どう解決していったのかといった経験談をふんだんに話していただきました。不特定多数対象の研修では聞けないような話も聴くことができて、非常に有意義なものになりました。
私を含め、受験生時代に破産を特別深く勉強したというわけではない新入会員も多く、他方で、実務では破産事件はまだまだ重要な割合を占めていることから、新人弁護士になってまず初めに苦慮するのは破産の申立てであろうと思います。
法テラス等で法律相談を担当させていただく時に、新人弁護士はクレサラ案件を優先的に回していただくのですが、そのクレサラ案件で避けては通れないものが破産申立ての基本的な知識です。
例えば、依頼者から「借金があります。しかし、できれば破産はしたくないのですけれど、私は一体どうしたらいいでしょうか」、「すぐに依頼したとして、免責されるまでにどれくらいの期間がかかるのですか。また免責されない可能性はどれくらいあるのですか。」などと尋ねられた場合です。
まず、どう答えるべきでしょうか。
さらに何を依頼者から聴き取るべきでしょうか。
破産申立ての代理をして、様々な案件に関わって初めて、このような質問に正確に答えられるようになるものだと思います。
しかし、講師の先生方の体験談を追体験させていただくことで、これらの質問に対する的確な答えをこの研修で見つけることができました。
失敗談も交え
講義は、まず、破産申立ての代理人として一般的な注意点の解説から始まりました。具体的には、①破産、②民事再生、③任意整理のそれぞれの手続き選択についての注意点、同時廃止事件と管財事件の選択基準や、破産の書式の記入や添付資料についての注意点、自然人や個人事業主の破産申立ての受任後まず何をするべきか、注意すべきことはあるか、自由財産と拡張についての基本的な知識と運用などについて、ディスカッション形式で、講師がそれぞれの体験談や失敗談を交えながら、各々の考え方を示してくださいました。

これらは、いずれも大阪地方裁判所等編集の『破産管財手続の運用と書式』(新日本法規)や大阪地方裁判所第6民事部編集の『破産・個人再生の実務Q&A』(大阪弁護士共同組合)などの本に知識としては記載されていることですが、本に記載されてある内容をもっと簡潔に、わかりやすく噛み砕いた言葉で説明していただきました。
そして、それは今、私が依頼者に対して説明する言葉になっています。
また、受任通知をどのタイミングで出すべきか、また出さない場合もありうるかなど、一定程度各申立人代理人の裁量に委ねられる点についてのコメントもありました。
さらに、例えば、依頼者に破産に至った経緯の事情を聴取する際のコツなども教えていただきました。こういった点については、まさに経験に基づくものであって、その経験の一端を教えていただける機会は、経験に乏しい新人弁護士にとって生命線です。それらの知識はすぐに役に立ちました。
一般的な注意点の解説の後は、佐々木章先生(60期)が体験された案件を元にした具体的な事例に沿って、事情聴取の注意点から免責不許可事由がある場合の対応までを解説していただきました。
先に学んだ一般的な注意点についての説明を充分に意識しながら、具体的な事例を検討することによって、さらに破産申立てについての理解が深まりました。
また、ここでも、ヤミ金への対応や過払い金の回収における妥協点など、講師の先生方の豊富な実務経験に基づいた貴重なお話を聴くことができました。
本当に興味深く、ためになるお話が多く、あっという間の2時間でした。
重鎮から頂門の一針
この研修は主に62期の新人弁護士が対象であるのにも関わらず、宮崎裕二筆頭常任幹事を初め、多数のベテランの先生方が来てくださりました。春秋会全体で若手を育てようと思ってくださることを肌で感じ、大変嬉しい気持ちになりました。

また、会派を超えて破産法の重鎮とされておられる木内道祥先生が、新人向け研修の行われている部屋に入ってこられた時は、さすがの講師の先生方も驚きで息を飲んでおられました。
木内先生が研修の最後に言われた「破産手続きを円滑に行ってもらうために、大阪地方裁判所の裁判官らと共同で本を作ったものであるが、最近は悪しきマニュアル主義が増えており、本に書式が載っていない文書の作成の仕方がわからないという弁護士もいるらしい。諸君らは充分に気をつけるように」という趣旨の言葉をかみしめて、これから研鑽を深めていかなければと思いました。
また宮崎先生から、最後の挨拶で、「今日、研修にもかかわらず六法を持参していたのは木内先生だけのようでした。木内先生ほどの、いわば六法が頭の中にすべて入っている先生でも六法を持ってくるのだから、皆さんも次回からは六法を持ってくるようにしましょう、ね。」と指摘された時は、みんな、一瞬凍りついたものでした。
他方、研修後の懇親会では、講師の先生方や木内先生を初めとする先輩の先生方とざっくばらんにお話をし、期を越えて、大いに盛り上がりました。
今年度にも、まだまだこのような研修があると思います。新人弁護士にとっては、仕事を円滑に進めていくためにも、仕事で取り返しのつかない失敗をしないためにも、このような研修に参加することは必須であると思います。できるだけ多く、このような研修に参加させていただきたいと思っています。
最後になりましたが、このような機会を設けてくださいました研修委員長の村上博一先生、若手会代表の鈴木節男先生をはじめ、春秋会の先生方に、心より感謝申し上げます。
以上


