沖縄新人歓迎旅行4- 米軍基地潜入レポート -

キャンプコートニーでのフリーマーケット


沖縄旅行の最終日。初日以来、20度を越える温暖な気候、黄色や青の魚、沖縄の歌を歌うきれいなお姉さん、昼間からのビール、と脳を麻痺させるものが次々現れ、すっかり気分は南国モードである。
しかし、この日の予定は、緊張度が高い。米軍キャンプ内のガレージセールを見学するというのだ。米軍キャンプといえば、世界最強の軍事国家の軍事基地。基地内では、日本の法律は適用されないとも聞いている。なにか失礼なことをやらかすと、一触即発の事態に発展しかねない。緊張感をもって入場する必要がある。同事務所の山上先生と潜入前の綿密なブィーフィングを行い、バスに乗り込む。

前日の酒宴のためか、何名かの敵前逃亡者をホテルに残し、バスはうるま市のキャンプコートニーに向って出発する。1時間弱ほどで、バスはそれらしいゲートの前で停車した。

最初の話では、バスで基地内に入るとのことであったが、動きが無い。なにやら、不測の事態が発生したのか、前のほうで国際交渉が行われている。ひょっとしたら、私のせいかもしれない。私の趣味が中東をほっつき歩くことであることは、新人紹介で述べさせて頂いたが、何年か前、シリアのビザを貼り付けたパスポートを持ってハワイに泳ぎに行った際、私のパスポートをめくる入国審査官の手がピタリと止まり、怪訝な様子でシリアへの渡航目的を質問され、壁に手をつかされ、靴まで脱がされて身体検査をされたことを思いだした。私は、テロリストとしてマークされているのか。恐ろしいことだ。

理由は不明であるが、そのうち交渉がまとまったらしく、我々は徒歩で、基地の中に入ることとなった。基地の中は、芝生が敷かれ、アメリカっぽくなっている。頑丈そうな軍事上の乗り物が停まっている場所もあり、こんなものバックに写真を撮っていいのかと思ったが、気にせず写真を撮ったりした。

基地の大きな駐車場をさらに奥に進む。ビリー隊長のような兵隊が”Good mourning!!”と我々に声をかける。気さくな奴である。やがて、ガレージセールの会場に出た。沖縄での赴任を終えて、本国に帰るアメリカ人が、家財道具の不要なものを安く売っている。商品は、衣服や玩具が多いが、その品物たるや、まさにアメリカである。よく、アメリカ映画で子供が遊んでいる、やたらリアルな人形とか、日本の住宅事情からすると、あまりにも大きすぎる紫色の恐竜ぬいぐるみが売られている。どうでもいいことだが、なんでアメリカのおもちゃは紫色の物が多いのだろうか。また、衣服も多数売られていたが、正直言って買う気にはなれない。

ガレージセールは、早々に切り上げ、駐車場の向こうにあるスーパーを探索して見る。スーパーの前には、ハワイとかによくある、ポスト型の新聞自動販売機がおいてある。しかも、値段はドル表示だ。店内を外からのぞくと、巨大なコーラーのペットボトルや、エンジンオイルの容器のようなものにはいった牛乳など、それらしいものが陳列しており、まさに日本の中のアメリカである。是非とも、入ってみたい。

入り口には、IDカードが無いと入れないという意味の英語が書かれていたが、読めないふりをして店に入る。残念ながら、すぐ店員が飛んできて「IDが無いと入れない」と追い返された。なんとか店に入ってみたいので、5分後「腹が痛いのでトイレを借りたいのですが…(ウソ)」と再トライした。しかし、店員は「ここは入れない。駐車場の向こうのトイレに行け」と、取り付くシマもない。作戦失敗である。次の作戦を考えていたが、他の先生に「広瀬先生。なんでそこまでして入りたいのですか」などと笑われたので、さすがにアホらしくなり、これ以上の作戦は中止した。

時間が迫ってきたので、基地から、撤収することとする。我々は、そのあたりの写真を取りまくったり、基地の建物をバックに記念撮影をしながら、ゲートに向けて歩いた。そして、任務を終え基地から去ろうとした。ところが、ゲートの警備兵が「写真を撮ってはいけないのですが。今すぐここで、データを消去してください」と語気鋭く申し向けて来た。先生の一人は、そこで指示に従いデータを消去した。同事務所の山上先生は、このご時勢には珍しく、フィルム式のカメラを持っており、この中には、昨日の私との二人旅の思い出が詰まっている(男同士で怪しい)。ここで、カメラからビローッと出して感光させろというのか。

我々は、高度な国際交渉を行い、自宅に帰って、現像直後に必ず廃棄するとの約束で、その場は切り抜けた。しかし、考えて見ると、そのような履行の担保がない約束で許していいのか、という素朴な疑問は残る。たいしたものは配備されてないな、この基地。

わずかな時間であるが、米軍基地が、日本の中の外国であるということが十分実感できたひとときであった。考えて見れば、普通の市民が住んでいるすぐ横に、日本の法律の及ばない地域があり、なんか危険な兵器が置いてあったり、爆音を撒き散らす戦闘機が飛んでいたり、不思議なことである。これはアメリカが悪いのか、戦争に負けた日本が悪いのか、日本が悪いのだったら、なんで沖縄の人だけが負担をするのか、など疑問は尽きないが、このような高度な議論をする域に達していないので筆を置く。

以上