・ゲートーキーパー問題が急転、緊迫した情勢に
・大阪地方事務所の概要が固まる
・裁判所の処置請求に対する取扱規程が制定の方向へ
1.金融情報機関(FIU)が、金融庁から警察庁に移管される
これまで、日弁連は6月に理事会方針に基づき、報告義務の法制化には反対しつつ、法制化が行われる場合であっても、守秘義務の範囲内の情報については報告義務を免れること、守秘義務外で知り得た情報で疑わしい取引にかんする情報の報告義務は、日弁連として会員弁護士は、報告を懈怠した場合も罰則の適用を受けないものとすることを骨子としてこれまで法務省と協議を続けてきました。この協議は、制度上は金融庁にFATF勧告に言う金融情報機関(FIU)が置かれ、金融庁が、日弁連の通知の中で刑事事件の捜査等に資すると認めた場合にのみ、捜査機関に情報を提供する構造になっていました。これまで、法務省もこれらの日弁連の行動指針に事実上理解を示し、報告義務を法制化するか日弁連の会規化で足りるか等の段階まで協議は進んでいました。
ところが、理事会当日の日経新聞で、突然この法案のとりまとめを警察庁が担当することに伴い,FIUをそっくり金融庁から警察庁に移すことが省庁の局長会議で決定され、テロ対策推進本部で決定されました。これは、法務省とこれまで協議してきた基本構造と全く異なり、重大かつ深刻な問題となります。弁護士会そのものは自主自立の団体であり、政府等の権力からの独立が強く求められますし、特に捜査機関である警察庁とは刑事捜査の過程では対立構造にあり、刑事捜査で被疑者等の権利を擁護するべき弁護士や弁護士会が、警察庁に報告義務を負う制度は国民の信頼を根本的に揺るがしかねません。理事会でも、当然ながら原則に立ち戻って直ちに反対声明を出して運動に取り組むべきとの意見が大勢を占めました。他方、金融庁から警察庁に報告先が変わったというだけで情緒的に反対するべきでなく、冷静に「重大かつ深刻」とする中身を吟味しないと国民の支持を得られないのではと言う意見も出され、執行部では、慎重かつ早急に運動方針を提起することになりました。諸外国の弁護士会もFATF勧告の受諾については、基本的に反対しており、アメリカは愛国者法があるとの理由で受入の方向ではありませんし(但し、愛国者法は9,11事件後数週間で成立した人権侵害の甚だしい悪法ではありますが)、ベルギーではEU司法裁判所に憲法判断を仰いでおり、外国情勢も流動的です。仮に、反対運動を提起し、効を奏しなかったときは、個々の弁護士が直接警察庁に報告義務を課す立法が強行的に進められる危険性もあり、なんとしても会員弁護士が直罰の対象になることは避けなければなりませんが、この立法は1年遅れて平成19年の通常国会に上程される予定ですが、弁護士会として全力を挙げて当初の方針に立ち返り全面阻止の運動に取り組むべきと思います。何よりも、ゲートキーパー問題は、まだ会員間では関心の薄いのが気がかりです。
11月18日付の日弁連ニュースを是非ご覧ください。
2.日本司法支援センターの地方事務所の概要が示される
16日の理事会で、全国の単位会に設置される地方事務所の概要が報告されました。それによれば、大阪では、堺出張所を含め職員数が29名で(非常勤を含む)本所には、所長、複数の副所長のほか常勤の事務局長が置かれます。局長の下に総務課長、民事法律扶助課長兼国選弁護課長が配置され、7つの係が設けられる組織イメージで、すべての単位会に職員数や面積、賃料の上限など詳細が示され、来年8月には賃貸契約が開始するように求められています。また、スタッフ弁護士の確保状況は、58期までの弁護士で確定者が21名でなお公設事務所へ就職するかスタッフ弁護士になるか迷っている人が8名いるとのことで平成18年のスタート時の対応体制は何とかやっていけるものの、21年度からの公的弁護が拡張された際の人的体制については見通しがついておらず、都市部を中心としてスタッフ弁護士の養成確保に注力する必要性が大です。
司法支援センター大阪事務所は、新会館内に設置される予定ですが、現状ではそんなに大きなスペースの確保が困難な状況にあり、法務省から示された他地域の状況からすると大阪は相当広い事務所面積が必要となります。現弁護士会分館は新会館の建設費用に充てるため売却することで総会決議がなされていますが、分館をしばらく保有して活用することも再検討するべきではないでしょうか。また、司法支援センター大阪事務所と刑事・民事公設事務所との役割分担も一層詰める必要が出てきています。
3.処置請求に対する取扱規程が一部修正で、臨時総会に諮られることに
この問題は、裁判所が弁護人の出頭や尋問活動などの弁護活動に対して訴訟指揮権の発動として弁護士会に「処置請求」がなされた場合の、弁護士会の取扱ルールを全単位会の共通ルールとして規程化をしようとするもので、防御権や弁護人の弁護権に重大な影響を及ぼすだけに個の取扱規程の目的を明確にする必要がありました。当初の執行部案では第1条は国民の信頼を確保することを目的としていましたが、単位会の意見照会の結果を受けて、この理事会では「もって弁護人が弁護権を十全に行使することを確保すると共に」と修正されましたが、当然のことだと思います。また、裁判所の処置請求がなされた場合は、原則として所属弁護士会が調査をすることとして日弁連は例外的な事例のみ対処し調査することに規定案では定められました。具体的には、処置請求の対象弁護士が複数の弁護士会にまたがる場合や小単位会で対象弁護士が複数で調査の公正さが担保できないと単位会が判断した場合など日弁連で対処することが相当と認めたときに限られることになりました。次回の理事会で承認されれば、来年の3月の臨時総会に議案として諮られる予定です。
この問題は、昭和50年代の荒れる法廷の時代に日弁連でも審議され、その際には規則化が見送られた経緯があるだけに、臨時総会では議論を呼ぶものと思われます。 また、同時期に意見照会されていた開示証拠の目的内使用のルールを定める取扱規程については、単位会から多様な意見があり執行部で整理して次回の理事会に諮られる予定です。


